[ シュークリームフィッシン! ]

 「あれ、どうしたの獏良くん」

 「急にごめんね、ユウギちゃん。はい、これ」

 この間のお礼だよ、と手渡してくれたのは紙の箱。甘党の心躍る、小奇麗なケーキ屋さんの箱だった。


 「おいしい〜!!」

 「でしょう?ここのシュークリーム、僕大好きなんだ」

 「でも、食べてから言うのもなんだけど、もらっちゃって良かったの?そのぅ・・・」

 「大丈夫、昨日仕送りが入ったんだ」

 ついつい無駄遣いしちゃってさ、ダメだね、僕。ユウギちゃんより年上なのに。

 そう言ってくすくす笑う獏良くん。いや、実際私は君よりはるかに年上なんだけどね。

 そういう設定だから仕方ない。低身長なんだ、自然と童顔になるのは仕方ないことじゃないか・・・自分を慰めるためにかぷりとまたシュークリームにかぶりついた。うん、おいしい。

 「ユウギちゃんって、本当においしそうに食べるね」

 「うん! 何故ってそれはオイシイから!」

 「そっかぁ・・・可愛いなぁ、ユウギちゃんは」

 あまーーーーーーーーーーーーーい!!

 「ぶふうぅ・・・げほげほっ!!」

 「わ、わわ!大丈夫?」

 「だ、いひょふ・・・」

 あからさまに年下扱いされたから(だとしたら明らかに義務教育前の子供に対する態度ですよ)なのか、甘い言葉に動揺したのか分からないが、とにかくびっくりだ。
 吐かなくてよかった・・・。

 「と、突然どうしたの・・・・」

 「ふふふ、だって僕、嬉しいんだ。こんなに可愛いお隣さんができて」

 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 大人なんだから、大人扱いして欲しいと思っておいてアレだけど、
 この人もしかして・・・・
 ろりこ・・・

 ・・・・いや! いや、いいや!!

 彼にとっては中学生と高校だ!
 天文学的な確立を超えて彼に好かれて口説かれているとしても、でっかく離れてもだいたい5歳差!大人になれば問題ないさー!かんけいないさー!
 逆に言えば大学生と高校生でも問題ないさー!
 今はもはや社会人と中学生の世の中だからな!10歳20歳の差もグローバルノーボーダーだからな!!

 っていうか、そもそも獏良君は他意はなさそうな爽やかさんくみー!って感じの好青年ではないですか!ん?好少年?
 ともかくそんなヨコシマな感情は一切アウトサイド!のはずです! という希望的観測!

 い、いかんいかん。甘い言葉に慣れてないからって混乱しすぎだ。
 ちょっとマウスがスイートなだけですよね。
 うん、そうだよ。シュークリーム食べてるし!(根拠のない自信)

 「でも不思議だなぁ・・・僕ね、結構人付き合い苦手なんだよ。
  でも、なんだかユウギちゃんとはなんていうか・・・自然体で付き合っていけそう」

 「そ、そうなの?」

 自然体でソレ・・・? 天性のホスト体質か何かかこの人は。

 「うん。 うーん、年下だから気負わなくていいのかなぁ。
  あ、何か困ったことがあったら、遠慮なく言ってよ。お隣同士なんだしね!」

 なんだか頼れるおにいちゃんに見えてしまって、私は歳も忘れて、うん!と元気に返事をしてしまった。うっかりだ。

 しかし月末になってまた行き倒れている獏良くんを発見し、再び保護したのはなんというか・・・・・そういうオチです。
 獏良くん、高校生とはいえ、ご利用は計画的に、だよ・・・。




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