『どうやら、青学の男子テニス部関係者に魔王の手先が居るようだ。
  その男子生徒を特定し、一刻も早く退治してこの世界を正常化して欲しい。
  もたもたしていれば、いつ世界が乗っ取られるかも分からない。
  残念なことに、これは脅しじゃない。
  ・・・そういう訳だ、後は頼んだぞエンジェル』

 「設定に無理ないかな」

 どこの洋画劇場?



 [ 第3回 スーパーマネージャー★ミサちゃん・1 ]

 忘れることなかれ、あくまでこの作品は夢と勇気と絶望に溢れるファンタジーです。

 そう、これはあくまでもこの世界を護る天使代行のお話。
 私は『天使に代わっておしおきしなければならない、天使の力を借りただけの戦士』的なものなのだ。
 とは言え、今までまともな魔法も奇跡も目の当たりにしたことないんですけどね。
 それどころか天使的な必殺技的なものも無いんですけどね・・・。

 歴代の『ラファエル』は治癒専門みたいな感じだったと聴いてるから、あんまり派手に活躍する役じゃないのかもしれない。しかし、その力を発揮したことは未だ無い。
 というか天使らしいことをひとつとしてしていない。かなりただの人間だ。

 ジャッキーの一任とはいえ、こんな半人前な発展途上のエンジェルをいきなり現場に入れて大丈夫なんだろうか・・・。
 私自身は予防摂取なしで一度もインフルエンザにも麻疹にもおたふく風邪にもかかったことないくらいに丈夫だが、これとは治癒能力とはあまり関係ないだろうか。
 戦えないくせに自分ばかり治癒力を上げていても仕方ないだろうし・・・。

 というか、テニス部マネージャーしなきゃなんないならさっさと言えよ。もっと早く!
 あれだけ拒否反応示してクラスメイトからのお誘いを断っただけに、いざやるとバレたら気まずいったらない。
 ただでさえ隣の席だっつーに・・・。

 まあ、命令なら言われたらやりますよ。
 ワタクシは金で買われた哀れな神の下僕ですから!
 ジャーキーが「後から言うなよ・・・」って感じの行動起こすのはいつものことですし!

 職員室に寄るついでに顧問の竜崎(L!覚えたよ褒めて褒めて!)先生に挨拶し、とりあえずしばらくは仮入部ということで、実際にマネージャーの仕事に触れてみることになった。

 とりあえず、あれだけ断っておいて、あのときのクラスメイトに「やっぱ入ることにしちったテヘッ☆」なんて言えるわけない。
 「お前の口車に乗ってやったんだよ、仕方なくな!」といった大人の余裕で、とりあえず今日は様子見だ。
 ・・・近日中に、否応無しに本入部になるのだけれども。

 ああ、サンデーが・・毛利元就が遠のいていく。
 ・・・・・・マネ、実は心底やりたくないッス。



 [ 第3回 スーパーマネージャー★ミサちゃん・2 ]

 単身でテニス部に乗り込むはずもなく、竜崎先生に案内されての到着。
 やたら男子テニスコートに女の子がたまってるのが気になったが。
 何?何かイベントでもあんの?
 先生がちょっと呆れたように眉をひそめているのを見て、なんとなく聞けなかった。

 辺りを見回して確認。
 例のムゲにお誘い断った隣の席の少年は見当たらなかった。
 ちょっと安心。サボりか?サボりであってくれ。間違ってもトイレ休憩とかやめてくれ。

 まだ授業が終わったばかりだ。
 部活動はどこもまだ始まっていないらしく、グラウンドに見えるサッカー部員もぽつぽつとしか集まっていない。
 それに比べれば、テニス部はまだ集まりがいい方か。
 先生によれば、これでも部員の集まりはぼちぼちらしい。結構な人数を抱えているようだ。

 ・・・これ、ひょっとしなくても例の悪の手先を絞り込むのは相当大変なんじゃ・・・・?

 例の眼鏡の顧問―ではなく、手塚部長に引き渡され、簡単な説明のあと、先生はやりのこしの仕事があるらしく戻っていった。お疲れ様です。

 私以外マネージャーは2人いるらしい。
 どちらも女子マネージャーだとか。男子中学生の分際で、何と贅沢な。

 一人はあのテニスボールの洗礼をくれた例の美少女だ。
 確かアマネ、とか言ったか。

 もう一人は図書委員だとかでまだ来ていないようだ。
 しかしその子は病気がちで、学校自体休むことも多いらしい。
 『アマネ』さんの方も家の仕事の手伝いで、たまにマネジ業を休まなければならないことも度々あるとか。

 ・・・な、何だか色々と複雑だな、マネージャー。
 隣の席の少年が言う「人手が足りない」というのは、このことか。



 [ 第3回 スーパーマネージャー★ミサちゃん・3 ]

 「仮のマネージャーとはいえ、君も青春学園男子テニス部の一員だ。自覚を持った行動をしてくれ。くれぐれも問題を起こさないように」

 厳しい面持ちで眼鏡を光らせたかけた鬼軍曹、いや手塚部長はマネージャーとして顔をあわせて早々、重すぎる責任を突きつけてくれた。
 要するに俺らの名前に傷かつかないよう、全身全霊で努力をしろと、規律を乱すことこれ罷りならんと、そういうことか。
 どこの軍事養成所だ、ここは。

 「ぜ、善処シマス・・・」

 「もう、手塚。そんなに脅かさなくてもいいじゃないか。可哀想に」

 アークエンジェル様・・・!!

 あの後、例の大天使様は3年生レギュラーだという不二先輩という御方だと判明した。
 中学生かあ・・・わ、若いなあ・・・詐欺だなあ。
 ・・・もうこの人たちについては中学生を超えた何かだと認識することにした。

 とりあえず今居る面子で、と先生と部長からの紹介が終わって、早々現れた噂の女子マネ。
 「やった仲間だ!!さっきはごめんねぇ〜」と大喜びするテニスボールの精霊の化身の美少女から握手の洗礼を受けた。
 癒される・・・これが、若さか・・・。

 今は集まった者だけで体を温めている・・・ようするに準備運動を兼ねた運動だ。これが結構激しい。辛そうだが頑張れ。これも青春だぜ。
 その間に、とマネージャー業の仕事を手伝いながらの自己紹介だ。

 「ええと、私、・・・じゃねーや、えーと、一年の武藤ユウギです。よろしくお願いします」

 「ほんとぉ〜!?私も一年なんだよぉ!」

 「え、そうだったんだ!」

 「うん、そ〜。もう一人の子も一年なの」

 「へえ、じゃあマネって一年だけなんだ・・・大変じゃない?」

 「えへ、まあね・・・あ、天音(あまね)ミサっていうの。よろしくね!」

 「うん、よろしくー。 で、本名は?」

 「こ、これが本名だよ!!」

 本名らしい。
 そして、よく言われるらしい。
 さすがジャンプ。知名度高いね。

 粉からアクエリ作ったり、タオルの整理をしたりしながら、一通りの説明を受けた。
 さすが先輩、頼りになりますな。ちょっとおっとりしすぎてるけど。何もないトコでこけたり、アクエリの粉盛大に零してたりしてるけど・・・。・

 こういう人って、本当にいるんだなって、思いました・・・。
 うん、わかるよ・・・決してそういうキャラ作ってるわけじゃないんだ。これがこの子の素なんだとこの短時間で知った。

 これで全てが計算だといわれたら、私は・・・対人恐怖症になってしまうよ。
 まあカワイイから許す。
 というか、私も粉こぼしたしな!

 なんというか、彼女は典型的なぽわんとした・・・守ってあげたくなるタイプだ。
 もう白100%だ、まちがいなく。
 なんか、逆に悪い人に騙されたりしてないかどうか心配になってきた・・・・。

 「それにしてもミサちゃん可愛いよねー、モテるでしょ?」

 「あはは、まっさかぁ〜」

 「ええ、嘘だー。じゃあ彼氏は?」

 「居ないよぉ」

 「うっそ!絶対恋人居ると思ったのに!もったいないなー、作る気ないの?」

 「ないよ〜。
  だってさ、何ていうかな・・・ナマモノっぽいっていうか、リアルで気持ち悪いじゃない、三次元って」

 ・・・・。
 ・・・・・・・・んっ?



 [ 第3回 スーパーマネージャー★ミサちゃん・4 ]

 「ミサは、今のところは二次元しか興味ないや〜。
  ユウギちゃんこそモテるんじゃない?転校生ってフラグ立てイベント、いっぱいあるしねぇ〜」

 「・・・ふ、ラグ、ですか」

 「ん〜、なんてゆーか、ユウギちゃんってメールで告られそうなタイプだよね〜。こっそり想われてるカンジ・・・
  あ、そうだ。メールと言えばね、最近、隣のクラスの担任の先生からやたらアニメのセリフ送ってくるんだ。『君の存在に心奪われた男だ』とか『君は俺が守る!!』とか・・・ミサ、ガンダムはあんまり詳しくないんだけどなー」

 「・・・・・・それは・・・訴えた方が良いんじゃ・・・」

 「え?何で?日常におけるオタ友を増やしたいと願うのはオタの性だよ〜。悪いことじゃないよ〜。確かにジャンル違いはちょっと困っちゃうけど・・・。
  あ、ねえユウギちゃん。一通り説明したけど、今ので覚えたー?忘れたら言ってね?私もね、最初全然覚えられなかったんだ〜エヘヘ」

 ・・・。
 ・・・・・・な、何にしても良い子には違いない・・・。
 彼女は癒し・・・癒しだ・・・癒しなんだ・・・・うん、癒しだろう?癒しと言え。

 雑用は辛いけど、きっと頑張れるわ、私・・・。

 ・・・・・・って 待てエエエエ!!
 あぶないあぶない、当初の目的を忘れるトコだった。

 今の私はあくまで天誅エージェントだ。
 ・・・って言っても、探すったってどうやって・・・・ダウジング?

 「あのー・・・」

 「うあ!?はいィ!?」

 一人でタオルの取り込みをしていると、いきなり声をかけられた。
 な、なになになに!?

 「マネ、だよな?干しといたジャージ、もらいたいんだけど・・・ごめん、俺最近入院してて・・・えーと、初めまして。あ、場所分かんないならいいよ」

 「あ、大丈夫ですよ。こちらこそ初めまして。私は今日入ったばかりですから」

 「あ、そうなんだ」

 「はい。 あ、えっと、学年は?」

 「一年」

 「あ、なんだ同じ学年か〜。私も一年なんだ。委員会で遅れたの?」

 同じ一年にしても。どっちにしろ年下なんだが。

 「そうそう委員会。、あ、ごめん、俺、タケダ。武田元就」

 「もとなりィ!?」

 「え!?はい!」

 ハッ、思わず・・・・・。

 つい過剰反応してしまった。
 超おびえられた。いかんいかんいかん。

 ・・・いや、つーか武田って!
 誰ですかそのミックス大名・・・!!

 「ご、ごめん弟と同じ名前でー」と適当に嘘ついて、誤魔化しておいた。
 あっさり誤魔化されてくれた。よかった。

 しかも驚くことに同じクラスだったらしい。お互い気づかなかったってどんだけだ。
 武田君は通院の関係で午後の体育しか出なかったらしいけど、どんだけだ。

 こんな訳で、武田君が居なくなるまで終始満面の笑みで見送った私だった。

 ・・・いつか元就くんって呼ばせてもらおう・・・ウフフ!
 良く見るとちょっと毛利サンに似てるよね!髪型が!

 「でも武田君の奥さんは美味しいな・・・
  結婚すれば、武田軍になれて、かつ旦那が元就なわけだYEAH!!」

 「どういう意味?それ」

 音も無く背後に立つ少年。
 不意に背後をとられた私は情けない悲鳴を上げた。

 こわ。
 何で普通に声をかけないんだ。

 「・・・へえ、来たんだね。逃げたのに」

 くっ、と挑発的な笑みを浮かべる隣の席の人。
 一言余計だ。
 そういえば、彼は何といったか。確か・・・え、えち・・・・・・越後・・・は製菓会社だ。



 [ 第3回 スーパーマネージャー★ミサちゃん・5 ]

 ファイティングポーズの一つでもとりたいところだが、気まずくなればなるほど任務が滞る。
 釈然としないながらも、これビジネース。

 「・・・で、さっきのどういう意味?」

 「さっきのって?」

 「とぼけないでよ。武田と結婚がどーのこーのって言ってたでしょ」

 ああ、君聞いてたの・・・・。

 「いや・・・かっこいいじゃん?『元就』って」

 なんたって戦国武将。

 「・・・ふーん。・・・あのさ」

 「ん?」

 「俺も、リョーマでいいから」

 それだけ言い残すと、リョーマ少年は足早に去っていった。
 案外真面目な部員なのか、それとも単に部長が怖いからか。
 ・・・・すでに三人、グランドを走らされているからね・・・。

 ミサちゃんを助けたときはまるで紳士のようだったが、やはり部活では厳しい。
 さすが鬼軍曹殿。

 ぼーっとその後姿を何気なく追いかけて、ようやく違和感の原因に気づいた。

 「・・・・俺も、って・・・誤解されたかな?」

 かっこいいって言ったのは、毛利元就のことだったんですけどね。

 「やっぱり、ユウギちゃんモテモテだ〜!」

 「わっ!?」

 またしても音も無く背後に現れた人物に心臓が跳ねる。
 もし敵に暗殺者でも送られたら、死にまくりだな、私は。

 「あはっ、びっくりしたぁ?もー1人のマネ、紹介しに連れてきたよぉ!
  じゃ〜ん!!レイちゃんでーす!」

 なるほど、彼女の一歩後ろには、恐らく“レイちゃん”なのであろうもう1人の『女子生徒』が居た。
 部活ジャージのミサちゃんとは違い、彼女は制服のままだ。
 ・・・ああ、委員会が終わってすぐこちらに来たからだろうか。
 しかし、何故学ラン。

 彼女からは、例えるなら姫系のフワフワヒラヒラのワンピースのようなミサとは対照的な、どこか冷たい凛とした印象を受けるのは、釣り目がちの猫目で、かつ目元が涼やかというか、視線が結構鋭いというか・・・睨まれているからだろうか。
 髪も隣に並ぶミサちゃんと対照的な黒髪のショートカット。結構短い。
 それにしても初対面の相手に挨拶も自己紹介も抜きでメンチ切るとは何事だ。

 「ど、どうも・・・ハジメマシテ」

 「・・・・・・」

 彼女は一言も返さず、目をそらすことなく、私の顔をじっとみてきた。
 に、にらんでる、にらんでる。

 そういえば、この二人が並ぶとまるで、みくると長門・・・・ビジュアル的には。
 これで私がハルヒみたいな美少女だったら完璧だったのにね。髪の長さ的にはいい線いっていると思うのだが。顔的に残念賞。

 ・・・ここのマネは美少女じゃないとなれないのか?
 ・・・・いや、そんなはずはない・・・私、マネなれたし。

 ご機嫌でミサちゃんが私の肩を抱き、自分の人形を見せびらかすように“レイちゃん”の前に突き出した。
 さすがの“レイちゃん”も、お互い鼻と鼻の距離5センチのこの至近距離にはピクリと僅かながら表情を動かした。

 「レイちゃん、あのね〜この子ね、ユウギちゃんっていうだ!武藤ユウギちゃん!」

 必殺にっこり天使スマイルつきのハグで、その『レイちゃん』の前に突き出された。

 「レイちゃんと同じ、一年生! それでねっ、うちのチームの3人目のエンジェルだよぉ〜!」

 な に い っ て る の  こ の 子 は ?




【マニアックすぎてよく分からなかった人のための親切な解説】
スーパーマネージャー★ミサちゃん・・・アニメ「スーパードール★リカちゃん」のパロディ。リカちゃん人形のスピンオフ作品である「なかよし」系の子供向け魔法少女アニメ。

『天使に代わっておしおきしなければならない、天使の力を借りただけの戦士』的なもの・・・いわゆるセーラームーン的パロディ。

竜崎・・・漫画「デスノート」の登場人物、Lの偽名。デスノ世界では有名なアイドルと同姓同名。偽名だけど。

天音(あまね)ミサ・・・漫画「デスノート」の登場人物、弥 海砂(あまね みさ)より。恐らくデスノ中ではヒロインの役割だと思われる。

フラグ・・・ここで扱うフラグは小説や漫画・アニメ、ゲーム等のストーリーにおいて、後に特定の展開・状況を引き出す事柄を指すスラング。伏線と同じ意味だが、「フラグ」は比較的単純で定型化された「お決まりのパターン」意味を持つとされる。(wikipediaより)「死亡フラグ」などが有名。

『君の存在に心奪われた男だ』・・・ガンダム00の名台詞の一つ。30間近の男が10代半ばの少年に自らのを添えて送った台詞。しかし戦場での発言なのでガンダム的には問題ない。

『君は俺が守る!!』・・・ガンダムSEEDの名台詞の一つ。恐らく男キャラが女キャラに言ったセリフなので何の問題も無い。

毛利元就・・・ゲーム「戦国BASARA」の登場人物。冷酷な策士の美丈夫、のはずが2作目で羽目をはずしすぎて新天地へ。

武田軍・・・同じく「戦国BASARA」の武田信玄率いる軍。イメージカラーは赤で、全てをこぶしで語る熱くるしさが特徴。

みくる・・・有名なライトノベル「涼宮ハルヒの憂鬱」の登場人物。巨乳・童顔・天然の最強コンボを持つ未来から来た戦うウエイトレスさん。

長門(ながと)・・・同じく「涼宮ハルヒの憂鬱」の登場人物。読書好きで物静かで寡黙な宇宙人。しかし美少女。女性読者から圧倒的な支持を受けていると感じるのは個人的主観。

ハルヒ・・・同じく「涼宮ハルヒの憂鬱の登場人物」で、正ヒロイン。俺様ツンデレ美少女で願望を実現する能力がうにゃうにゃ。すいませんハルヒはよく知りません。


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